にゃお、と言う啼き声が聞こえた。おまけにカリカリと何かを引っかくような音まで聞こえる。その音につられて視線を向けると、窓の外に黒猫が居た。窓を爪で引っかいているようだ。…入れて欲しいのかな? 少年はふらふらと窓に近寄り、手を掛けた。取っ手を手前に引く。少し硬い。ガタガタと音が立った後、ギギ、と窓が開いた。猫はひらりと軽やかな身のこなしで室内に侵入し、床に降り立った。少年はしばし呆けていたが、猫が入ってきたことを確認すると窓を閉めた。また少し嫌な音が鳴ったが、気にしないことにした。猫に目をやる。猫はこちらを見上げて、再びにゃお、と啼いた。
「…何? お腹空いてるの?」
まるで返事をするかのように、にゃお、と啼く。少年は踵を返し、キッチンへ向かった。店主は留守なので、自由に立ち入ることが出来た。棚から適当な大きさの皿と、何故あるのかわからないが置いてあるにぼしの袋を取り出し、にぼしをざらざらと皿にあけた。人間用のミルクは猫の体には悪いと聞いたことがあったのでやめておいた。…にぼしも微妙なところだが。
皿を猫の目の前においてやる。猫はそれを見ると、すぐに食べだした。少年は猫の背中を撫ぜる。野良猫らしくない、ふわふわとした艶やかな毛だ。
「………。」
無言で猫を見つめる。自然と笑みが零れた。少年は猫が好きだった。たまにこうして猫を拾っては可愛がっていた。その度店から追い出されるので、店主が居ないこんな時間に少しだけ置いてやっては直ぐ逃がす。今回も勿論そのつもりだった。だが。
猫は皿の中のものをぺろりと平らげ、毛繕いを始めた。…この場から離れる気配はない。
「…行かないの?」
その言葉に返事はない。ただちらりと少年を見やるだけだ。その際、金色の目が見えた。月の色。
「んー、仕方ないか。とりあえず東堂さんに置いて良いか頼んでみるけどさ。あんまり期待はしちゃいけないよ?」
にゃお、と返ってくる。少年は頬を軽く掻き、参ったなぁと呟いた。
猫の金の目が光る。猫は少年を見つめ、そして床に丸くなり、目を閉じた。
〈第一章へ〉
***
喫茶モノが一回書いてみたくて…(こらこら
とりあえずプロローグ。あんまりプロローグぽくないプロローグ。
少年の名前くらい出そうよ自分…。
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