――単なる個人的興味です。貴女の気にすることではありません。
千暁はそう言ってのけたが、有紗は気が気ではなかった。さっき出会ったばかりの人たちにいらぬ迷惑を掛けてしまっているのではないかと。校門の前から夜の学校を眺めている今でさえ、そう感じていた。
――もしもここの幽霊が本物だったら?
――危害を加えてきたら?
「有紗さん」
「はいぃっ!?」
千暁の声で我に返る。どうしました? と訊かれて、何でもないです、と返す。今更後には引けないのだ。本物だったら本物だったで、どうにか対処をしなくてはならないことに変わりはない。全ては自分の後先考えない一言の所為――…。
「有紗さん、口は堅いほうでいらっしゃいますか?」
「……は?」
ここまで来て、一体どういう質問なのだろう。有紗は不思議に思いながらも東堂の問いに返事をする。
「…まぁ、堅いっちゃ堅い…ですかねぇ…。」
「じゃぁ、お願いします。
東堂の言った言葉の意味を尋ねる前に、千暁は細いフレームの眼鏡を外した。
金色がかった茶髪。青い瞳。女と見間違えそうな程の整った顔立ち。そこに居たのは、紛れもない…。
「ど、どうして歌手のあなたがバイトなんて」
「質問は後。今は進まなきゃ、有紗ちゃん。…ここ、左でいいの?」
「えっ、うわ、はい」
眼鏡を外して口調まで変わった
「…やっぱり、眼鏡は無い方がいいね。視界が澄んでる――」
「ところでトーヤ君、わかりますか? この気配…。近づくにつれて、濃度が高くなっている」
会話についていけない有紗は、ただ早歩きで先を行く二人に置いて行かれない様に付いていくだけだった。…出来るなら、会話の意味を知りたくは無かったためでもある。
ふと、東堂が有紗に振り向いた。そして早口で言う。
「有紗さん、どうか覚悟をしていてください。20年前の話は本当です。もし見えても、あまり驚かれないように…」
見えるって、何が。その問いは飲み込む。今更な話だ。答えも聞きたくない。
化学室の標示のある扉の前で、二人は足を止めた。有紗も同じく足を止める。東堂とトーヤが振り向いた。
「間も無く二時になります。…いいですね、有紗さん。」
「開けるよ」
言って、トーヤが扉に手を掛けた――
ただ一つ言えるなら、この不気味さの中、一人ではなかったことだけが有紗の救いだった。
〈第五章へ〉
***
この回書いてて凄く楽しかった(笑) 前サイトの時からいらして下さっている方はもしかしたらニヤリとして頂けたかもしれません。
もちろん華歌アッシュが初めてな人にも楽しんでいただけるようにしてるつもりなのですが…どうだろう。面白いですか?;
でもこれで大分東堂のキャラが固まってきました。言うなれば、執事系(待て
一応店主なのになぁ…。ははは。
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